シーン1 緑の絶壁に囲まれた難破船
× × ×
「も、しもしー、失礼しまーす」
「ここ、陸上部ですよね」
「いない」
「たった一人の陸上部、何の為にはしってるんだろう」
シーン8 朝比奈学園・校庭
「あ、戻ってきた」
シーン9 朝比奈学園・保健室
「道子先輩、あの人、峰岸さんでしょ」
「見もしないでいいかげん」
「決まってるじゃないですか。あんまり退屈だから、気まぐれですよ、単なる気紛れ。じゃ、行ってきます」
シーン10 朝比奈学園・校庭
「こんにちわー、お一人ですか」
「(悲鳴のように)あー」
シーン13 朝比奈学園・倉庫・外
「なんか、話しにくーい。どうしよう」
シーン15 朝比奈学園・校庭(夜)
「やっぱり、言えない」
「(呆然)うそ……」
シーン21 校 庭(夜)
「中に人が。うわ、誰かあ」
「人がいるの。あそこに陸上部の人が」
「いつもたった一人で走ってる人よ」
「そんな事より、先輩、あの人、助けてやってよ。あの人、死んじゃうよう」
シーン23 朝比奈学園・校庭(夜)
「間に合わないよう。誰か」
「貴方、男の子でしょ。ね、助けてやって、お願いよ」
シーン28 朝の商店街
「もっと早く、早くー!」
「あ、犬、見てえ」
「おお、ゲットー!」
シーン29 学園・校門前(登校時)
「バイバーイ」
「やべえ」
シーン34 パン屋・前
「はい、全部で二千八百円ねえ」
「ダメダメ。ほんと先輩、お嬢なんだから」
「あ、帰ってきた」
「あゆみ先輩っ!」
「一年二組長谷川さなえ、今日から私も陸上部に入れて下さい。オッス!」
「郁恵さんも昨日、私達と一緒に先輩を保健室まで運んでくれたんですよ」
「郁恵さん、道子先輩、麗子先輩、二年の知子先輩」
「真穂先輩も」
「みんなで運んだんですよ。本当にあゆみ先輩、助かってよかったですねえ」
「あ、それは」
「うっ!」
シーン36 翌日の放課後・海沿いの道
「超カッコ悪い」
「だったら自分で助けたって先輩に言えばいいのに。私が言ってあげようかな」
「恐い(ガックリした)」
シーン40 昼過ぎのアーケード街
「あ、あの服、かわいい。見て見て」
「郁恵さん、お早うございあーす」
シーン42 学校・玄関
「恐っ」
シーン43 学校・女子トイレ
「足っ、足元―」
シーン46 保健室
「道子先輩、よかった、来てくれて。麗子さんがどうしても保健の先生は呼ばないでって言うから」
「(ショック)嘘でしょ?ね、先輩嘘だって言ってよー」
シーン48 海沿いの道
「麗子先輩、何の大会にでるつもりなんですかね?」
シーン50 海沿いの道
「ああ。又、遅刻だよう。どうしよう、学校、休んじゃおうかな」
「今の、エスタ?嘘?嘘じゃない!ヤダあ。本物のエスタ・ワンジロだっ!」
「エスタさーん!待ってえ!私、ファンなんです。サインしてえ!」
「ちょっと、その自転車、借りた!」
「絶対、サイン貰うぞ。死んでも貰うぞ。エスタさあん!」
シーン51 洞窟の前
「みんなあ、エスタさんよう」
シーン52 洞窟・中
「駅伝です。駅伝がやりたいんです」
シーン54 海沿いの道
「ほんとほんと?」
「何、やってるんですかア、先輩」
シーン64 学校・校庭(放課後)
「あゆみ先輩、どうしてヤル気あんくしちゃったのか分かんない」
シーン73 パ ン 屋(閉店後)
「明日だよー、駅伝大会」
「やだよ。走りたいよ。エスタさんに顔向け、できないじゃない」
「嘘?エスタさんから?なに?」
「虹だ……」
「そうだよね。仲間だもの、みんな、きっと明日はきてくれるよね」
「うん」
シーン74 大会当日・商店街
「あ、真穂先輩」
「そうだよ、仲間だもの」
シーン75 歩き出す七人
「私、高校デビューなんだ」
「中学の時なんて地味もいいとこ。誰も私のことなんて、覚えてないと思う。だけど、今の私には結構、満足してる。弾けられたからじゃないよ。駅伝やってて楽しいっって言えるもん。楽しいことを楽しいって素直に思えるほどかっこいいこと、ないって思う」
(ピンチランナー決定稿台本より)