N:陽世のナレーション
シーン2 坂本診療所・診察室
N「何を待っているのか、私には見当がついていた」
シーン3 遺伝子研究所
N「今日は私の健康診断の結果が出る日だった」
シーン4 坂本診療所・陽世の部屋
「……」
「……え?」
「……あ……切らなくていい……」
シーン5 同・診療室
「もしもし俊哉君?……え、来週?東京くるの?高校陸上の大会?凄いね……?応援?行ってもいいよ」
「私?元気。何してるって……診療所手伝ったり……うん、よかったら遊びに寄ってよ。じゃあまた」
「(鬱陶しそうに)……」
「……」
「……ホントに?」
「(ムッと宇宙を見る)……」
シーン9 夜の坂道
N「その夜の話が、私の運命を大きく変える事になった」
シーン45 坂本診療所・廊下
「話って何?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……知ってたよ」
「北海道の病院で偶然立ち聞きしたの」
「話はそれだけ?それじゃ」
「……?」
「(ショック)……明日から?」
「……そんなにひどいの?」
「約束違うじゃない!暫くここにいていいって……」
「来週、俊哉君が来るのよ?それなのに入院?試合の応援は?ここに泊める約束は!?」
「私が嘘つきになるじゃない!」
「どうして今のままじゃいけないの!?私まだ元気だよ!?入院する必要なんてないじゃない!ここだって病院なのに……私、入院してる姿なんか見せたくない!」
「(悪戯笑い)……なんてね。気にしないで。ちょっと困らせて楽しんだだけ。どうせアンタの約束なんてアテにしてなかったから」
「じゃ、私、入院の準備するから」
突如立ち止まる陽世。
その肩が震えている。
やがて陽世の嗚咽が聞こえる。
泣いている陽世。
―つづく
(マリア台本より)