N:陽世のナレーション
シーン2 大沢病院・陽世の病室
N「私は、また大沢病院での入院生活に戻った……」
「(笑顔になる)」
「(肯く)……」
「いってきます」
シーン3 坂本診療所・二階
「ただいま」
× × ×
N「それでも、私の生活にはわずかに変化があった。それは……」
N「私は、一日2時間、診療所の二階で絵を描くことを許可された」
「(嬉しそう)」
「うん……」
「内緒」
「内緒!」
N「こうして、病院と診療所の往復が始まった」
シーン10 坂本診療所・二階
「はーい!」
「うん……」
「秋までには……」
「一日2時間しかできないから」
「わかってる」
「一人で戻れる」
「うん」
シーン32 坂本診療所・二階
「はーい」
「ちょっと待って!(キャンバスに布をかける)いいよ」
「うん」
「(微笑む)」
シーン34 坂本診療所・陽世の部屋
「……」
シーン55 大沢病院・陽世の病室(夜)
N「この夏一番の記録的暑さ。それは、翌日も続いた……」
シーン56 坂本診療所・陽世の部屋(夜)
N「その夜は、とても寝苦しい夜だった……」
シーン57 坂本診療所・陽世の部屋
「今日は3時間描いてもいい?」
「描けるうちに描いておきたいんだけど」
「でも、私には時間が……もし……」
「……」
「うん……」
「ありがとう」
つづく……
(マリア台本より)