N:陽世のナレーション
シーン1 合宿所・玄関
N「姉たちは、一晩中眠らずに、私を探していた」
シーン5 青空に照りつづける太陽
N「その日の東京の最高気温は38度」
シーン7 ホテルのベッド
N「私も、朝まで眠れない夜を過ごした」
シーン13 センチュリーハイアットホテル・スイートルーム
「……」
「え!?」
「……」
「……」
「……」
「……」
シーン20 ホテル前の階段
「(救われた表情で)……俊哉くん」
「……ゴメン」
「……」
シーン24 坂本診療所・内
「ゴメンナサイ」
「(懸命に宇宙の一気しゃべりに割りこんで)あのー!」
「……あの……」
「今、俊哉くんと一緒だから」
「……うん」
「え?」
「画材屋さん」
「ちょっと買いたいものがあって」
「うん」
「うん」
「うん、ありがとう」
「うん……」
シーン26 絵画工房
「……私……きっと行かなきゃならないから」
「……うん」
「……喜んでくれるかな?」
「(黙っている)……」
「(無表情で宇宙を見たまま)……」
シーン33 絵画工房
「……ニューヨークに行ったら私……絵を勉強したいって思ってるの」思ってるんですか」
シーン35 街(このシーンだけ全文)
陽世と俊哉。
陽世「……ありがとう……つきあってくれて」
俊哉「……合えてうれしかったよ……」
手を差し出す俊哉。おずおず陽世も手を差し出す。
握手する二人。
そして、手を離して、じっと見詰め合う。
俊哉「……じゃ」
陽世「……うん」
俊哉「……頑張れよ」
陽世「俊哉君も」
俊哉「うん」
そして、背を向けて歩き出す俊哉。
その背中をじっと見送っている陽世。
見送っているうちに、切ない思いがこみ上げてくる。
陽世「……俊哉君!」
振り返った俊哉に、
陽世「いつか……会おうね」
俊哉「……」
陽世「いつか……きっとまた、どこかで」
俊哉「……うん」
陽世「元気で」
俊哉「……」
陽世「……」
シーン38 一海のマンション・内
「……診療所行ったら、ここだって聞いて」
「……帰った」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ソラネェ」
「これ、私が描いた絵です」
「私、何にも御礼できないから」
「このマットの色、自分で選んで。オネェマはこの色とか、リクネェはこれかなとか。ソラネェはソラ色で美美ネェはピンクで」
「叔母さん、ごめんなさい。私、まだもっと、ここにいたい。ソラネェのところにいたい」
「はい。ありがとうございます」
シーン42 一海のマンション
「あ、これ。それとレモンも」
「……パパが、昔よく作ってくれたから」
× × ×
「パパね。よく言ってた。陽世は一人じゃないんだって。素敵な4人のお姉さんがいるんだって」
× × ×
幼い陽世「(嬉しそうに)本当?」
幼い陽世「え〜と……」
幼い陽世「こんにちは。陽世と言います。太陽の陽に、世の中の世って書きます。みんなに会えるのをとても楽しみにしてました。仲良くして下さい」
× × ×
「陽世と言います。太陽の陽に世の中の世って書きます。みんなに会えるのをとても楽しみにしてました。仲良くして下さい」
N「この日、本当に五番目の妹になれた気がした」
―つづく
(マリア台本より)